■PDとCsIの組み合わせによる性能評価まとめ / かにこむ青木

2012年 5月18日:開設
かにこむ 青木康雄


秋月電子から発売されているCsIシンチレーターと、浜ホトのPD(S6775、S2506-02)の組み合わせの違いで、ガンマ線計数効率やスペクトル分解能がどう変化するかをまとめてみました。

組み合わせは以下の通りです。なお、本記事中では、それぞれの検出器をカッコ内の名称で示すものとします。

  10mm角 CsI + S6775(CsI大PD大)
  10mm角 CsI + S2506-02(CsI大PD小)
  5.5mm角 CsI + S6775(CsI小PD大)
  5.5mm角 CsI + S2506-02(CsI小PD小)

アンプ回路は自作バーブラウンアンプを使っています
計数ソフトならびにMCAには、iPod touch Gen4上でポケットガイガーProを使っています。MCAは200chの設定です。
自作バーブラウンアンプをポケガProに入力しますと、無感時のRMSが 1.6 % 前後になるので、ポケガProの閾値は、8.0 % に設定しています。


■検出できるガンマ線数

自室で空間線量及び、137Cs密封線源(9250 Bq)を使って、検出できるガンマ線数を測ってみました。
2012年1月28日に実験したこちら「CsI結晶サイズはデカいほど強いのか?(調査継続案件)」でご紹介したデータを再利用する関係上、本測定は、ポケガ基板改造バージョンのアンプで行いました。自作バーブラウンアンプで駆動しますと、この数値の 4~5倍程度のガンマ線を検出できます。

測定環境(自室)の空間線量は、平時ですと 0.055 ~ 0.065 uSv/h あたりをうろうろしています。が、それほど精度を要求される測定ではないので、大雑把にすべての測定で、空間線量は 0.060 uSv/h としました。
自室の空間線量は常時モニタしていますので、必要な測定精度は確保できています。

こんな感じになりました。



137Cs密封線源による環境放射線量のバイアス処理等は手動&定規による距離計測でやってますので、それほど厳格ではありません(有効数字2桁程度の感じ)。そんな事情を考慮しながら脳内補正して見てみると、まぁまぁリニアリティーは確保できているようです。

謎なのは、PDの大きさとCsIの大きさの組み合わせが、そのままのスケール感で検出できるガンマ線数に反映されるわけではないという点です。特に、小さいPDに、PD以上のサイズのCsIを付けた場合は、CsIのサイズを大きくしてもほとんど検出できるガンマ線数に変化はないという結果になっています。

S2506-02の受光面サイズは 2.77 x 2.77 [mm]。5.5mmCsIも、10mmCsIも、どちらもPD受光面からCsIがはみ出してしまいます。
はみ出た分は無駄になるってことなんですかね? でも、高さ方向は 10 / 5.5 = 1.8 倍になっているわけですから、その分ぐらいはガンマ線検出数に反映されてもいいように思うのですが・・・

一方で、S6775を使ったケースでは、5.5mmCsIと10mmCsIの高さの分ぐらいはなんとなく、ガンマ線検出数に反映されているように見えます。

なにぶんにも n=1 しかないので、たんなる検出器製造上のばらつきかもしれず、本件については引き続き【要・継続調査】とします。


■スペクトル分解能

自室で137Cs密封線源を使い、エネルギースペクトルを取ってみました。PDはS6775、CsIは10mmと5.5mmの2種での比較です。
ポケガProの「グラフ出力」機能で、MCA情報をPCに持ってきて、Excelで編集しています。


横軸はエネルギーレベルなので、すなわち、PDが受けた光の強さ(明るさ)です。

これ、同じPDを使っていてかつ、検出器以降のアンプ回路は全く同一ですから、CsIが 137Cs の 662 KeV の光子を喰らった場合、10mmCsIよりも5.5mmCsIのほうが、2倍弱明るく光っている PDに届く光が2倍弱多いってことになります。

かつ、ピークの形状を目視観察する限りでは、5.5mmCsIのほうが、エネルギー分解能は高そうです。

あり~~~、CsI大きいほうがエネルギー分解能高くなるのかなって、なんとなく漠然に思っていたのですが、違うんかな~・・・



■雑談

2012年1月28日に実験した「CsI結晶サイズはデカいほど強いのか?(調査継続案件)」のときに、PDとCsIのサイズによるマッチングみたいなものがあるのかもよ? という新たなる要検証課題を提起しましたが、どうやらこれはありそうですね。特に、137Cs密封線源を使ったスペクトルの様子を見てみると、以下のことがわかります。

私の素人推測ですが、こんな感じのことが起きているのでしょうか・・・

S-6775の受光面サイズは、5.5 x 4.8 [mm] です。10mmCsIだと、CsIとの接合面は、PD受光面よりはみ出てしまいますが、5.5mmCsIだと、おおかたFitします。
図にするとこんな感じ。

そういうことなんですかね? 実は、浜ホトのC12137を買ったときについていたドキュメントに、以下の仕様が記載されていたのです。



私が買ったのは C12137 なのですが、「シンチのデカい -01 なんてのもあるんだ~」なんて思いながら見ていたら、エネルギー分解能が C12137 より随分悪くなっている点に「???」だったのです。
MPPCサイズとシンチサイズとのマッチングで、シンチがデカくなった分だけ単位線量下でのガンマ線検出数はきっちり増えたけど、エネルギー分解能は低下しちゃったよ・・・ってことなのでしょうか・・・

今回、自分で実験してみてよく体感できました。引き続き調査研究を続けます。
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